生体材料・組織の標識や染色のための2光子励起蛍光(TPF)材料の開発を目指している。そのため、一連のシアニン色素(CD)のJ会合体が、水中に安定かつ一様に分散した系の開発を行った。アニオン性CDとカチオン性高分子電解質のコンプレックを形成させることにより、希釈やpH変化に対して解離しないJ会合体分散液が得られた。しかし、この方法では水溶性の高いCDにのみ適用可能であった。そこで、平均粒径が約400nm或いは100nmのシリカ粒子表面上にJ会合体を形成させる試みを行った。シリカ粒子表面にカチオン性高分子電解質を吸着させ、正の表面電荷を付与し、アニオン性CDを吸着させることで、J会合体吸着微粒子を得た。粒子の凝集もなく、安定な分散液が得られた。この方法では、種々のCDで、J会合体吸着微粒子の分散液を得ることができ、青緑赤の蛍光を示す分散液を得ることができた。試験的に分散液のキャスト膜を、共焦点蛍光顕微鏡(紫外可視励起)および2光子励起蛍光顕微鏡(近赤外光励起)により観察したところ、両顕微鏡で同一の像が得られた。このため、J会合体吸着微粒子は多重TPF染色剤として有効であることが分かった。現在、各CDのJ会合体吸着微粒子のTPFの励起スペクトルを評価中である。 本研究のもう一つの目的は、励起光である近赤外光(NIR)を表面プラズモン共鳴により増強させ、TPFの実効的な効率を上げることである。そのため、NIR領域にプラズモンバンド(PB)を有する金ナノロッドおよびシリカと金のコア/シェル構造の微粒子を作製した。J会合体吸着金ナノロッドにおいて、消光せずTPFを得ることができた。今後、発光効率等の評価を行う。一方、コア/シェル微粒子の方は、明瞭なPBがNIRで得られず、現在作製条件を検討中である。
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