研究課題/領域番号 |
22760012
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 徳剛 明治大学, 理工学部, 准教授 (90329110)
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キーワード | 光物性 / 薄膜 / 微粒子 / 非線形光学 / 2光子励起蛍光 / J会合体 / 表面プラズモン共鳴 |
研究概要 |
2光子励起蛍光(TPF)材料の発光効率向上のため、色素分子会合体形成によるTPF効率の増大と、表面プラズモン共鳴で起きる励起光増強によるTPF効率の増大を利用する。色素会合体には、蛍光性のJ会合体を用い、励起光増強には金のプラズモンを利用する。 これまで、J会合体形成におけるTPF効率の増大の評価を行い、種々のシアニン色素でJ会合体を微粒子上に作製し、種々の発光色をJ会合体の2光子励起蛍光から得ることができた。23年度は以下の3項目を実施した。 1.微粒子上への金殻構造の作製 近赤外光の励起光を増強させるため、近赤外領域にプラズモンバンド(SP帯)を形成させなければならない。 そのため、誘電体微粒子(コア)に金の殻構造を形成させる方法を開発した。シリカコア表面に、高分子電解質膜を作製し、その膜に金ナノ粒子を吸着・浸透させる。その後、塩化金水溶液からコア表面上の金ナノ粒子に、金を析出させて、コア表面を金で覆う。条件を最適化し、700~800nmにピークを持つSP帯を形成させることができた。 2.金殻構造上へのJ会合体形成 金殻微粒子上にJ会合体を形成させる。これまでに開発したJ会合体吸着微粒子作製方法を利用する。金殻表面に電荷を持たせるため、高分子電解質を吸着させ、正の表面電荷を持たせた後に、種々のアニオン性シアニン色素を吸着させてJ会合体を形成させることに成功した。 3.金の殻からJ会合体間の距離の最適化 両者の距離が近すぎると蛍光消光し、遠すぎると励起光増強が得られない。両者の距離を、金表面とJ会合体の間に7層の高分子膜を挟んで調整したものと、金殻構造の無いコア上にJ会合体を形成させたもので、TPF強度を比較したところ、約3倍の増大が前者の方に観察された。しかしSP帯による励起光の増強は100倍とも言われるので、さらなる距離の最適化が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シアニン色素のJ会合体形成における2光子励起蛍光効率の増大の評価、および微粒子上へのJ会合体形成法の開発については既に完了した。また、微粒子上に金の殻構造を形成させ、励起波長に用いる近赤外光の波長領域にブロードであるがプラズモンピークを形成させることができた。得られた金殻微粒子上に、J会合体を形成させると、発光効率が数倍であるが増大したことも確認済みである。最終年度では、各構造の最適化を行って、効率の増大を最大化させることを残すのみであるため、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
SP帯との共鳴を利用し、励起光の増強を効率よく行うためには、現在得られているSP帯をより先鋭化させる必要がある。そのため、金殻表面の微細な凹凸構造を無くすことと、粒径分布の狭いコアを用いる必要がある。平滑化において、合成条件の改善を行い平滑な表面を得る試みと、形成された凹凸を後から平滑化する試みを実施する。 金殻とJ会合体間の距離を高分子多増膜で調整したが、高分子多層膜では数nm単位でしか厚さを調整できない。そこで、金表面に厚さ数10nmのシリカ層をゾル・ゲル反応で形成せることも併用する。少なくとも約5~50nmの範囲で、両者の距離を調整し、TPF効率が最大となる距離を決定する。・
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