2光子励起蛍光(TPF)材料の発光効率向上のため、色素分子会合体形成によるTPF効率の増大と、表面プラズモン共鳴(SPR)で起きる励起光増強によるTPF効率の増大を利用する。これまで、J会合体形成におけるTPF効率の増大の評価を行い、種々のシアニン色素でJ会合体を微粒子上に作製し、種々の発光色をJ会合体の2光子励起蛍光から得ることができた。また粒径400nmのコア粒子上に金殻構造を形成し、SPR帯を近赤外領域に形成させることで、約3倍にTPF効率を向上させた。最終年度は、以下の成果を得た。 これまでの金殻微粒子は表面が平滑でないことと、粒径が400nmで光散乱の効果が大きいこと、そしてそのコア粒子の単分散性が低かったため、SPR帯は非常にブロードであった。光散乱の効果を低下させるため、従来の粒径よりも小くかつ単分散なコア粒子を用いて、金殻微粒子の合成を行い、SPR帯の先鋭化を行った。粒径が小さくなると、コロイド安定性の保持が困難になり、粒子のロスが多くなるため、金殻構造形成工程の簡略化を試みたが、SPR帯形成において従来の方法が最も良い結果を与えた。一方、金殻表面の完全な平滑化は行えず、大幅なSPR帯の先鋭化には至らなかった。 TPFの効率を理論上の数10~数100倍に増大させるには、SPR帯の先鋭化に加え、金表面と発光物質との距離を最適化する必要がある。両者が近すぎると蛍光消光し、遠すぎると励起光の増強が得られない。従来その距離を、高分子多層膜で調整してきたが、厚さを稼ぎにくく、厚さの評価も困難であった。そこで、金殻表面に約15~数10nmの範囲で、シリカの層をゾル・ゲル反応で形成せることに成功した。しかし、TPFの効率の劇的な増大は見られず、金殻表面が平滑でないことが、その主な原因であると予想した。
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