通常および親水化処理したカーボンナノチューブを試料としてイオン液体塗布による電子顕微鏡観察を行い、表面の親水-親油性によってイオン液体の親和性と一致するほど均一に表面をコートしてチャージアップをおさえ、微細構造の観察が可能であることを明らかにした。これは、イオン液体を可視化剤とする微細構造観察の可能性を示す意味で重要な成果であり、学会発表を行った。 さらに、イオン液体を可視化剤として化学的な前処理を施さない赤血球の電子顕微鏡観察に成功した。当初、赤血球のような変形しやすく壊れやすい細胞にイオン液体による処理法を適用することは困難と考えられていた。また、イオン液体を可視化剤とした走査電子顕微鏡観察像では、良好なコントラストが得られないことも問題点のひとつであった。 そこで、親水性が高く生体細胞との親和性が高いイオン液体を原液のまま用いて細胞を処理することにより、赤血球の破壊を抑えることに成功した。また、赤血球の変形も最小限におさえられていることから、細胞膜を介した浸透も起こっていると考えられ、細胞浸透性のよいイオン液体の探索を達成した。さらに、フィルターを用いた試料の前処理により、視野中の細胞数を増やし、それによって結果的に導電性を向上することにより良好なコントラストの走査電子顕微鏡観察像を得ることに成功し、赤血球のような遊離細胞にまで適用可能な汎用性の高い電子顕微鏡試料前処理法を確立した。
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