Au(111)表面に周期的に配列した鉄フタロシアニン(FePc)分子が、二次元の近藤格子となることを極低温強磁場STMによって示した。FePc分子は、Au(111)表面上で近藤効果を示すことに加え、分子層が周期的な正方格子を形成する。本研究課題では、まずFePc単一分子が示す近藤効果について、近藤温度T_Kの見積もること(2. 6K)などを通してしらべた。その後、この分子の吸着量を制御し、近藤格子を形成すると、基板と分子間の近藤カップリングよりも吸着分子間のRKKY相互作用が勝っている反強磁性磁気秩序相を形成することを近藤クラウドの空間分布などから明らかにした。また、このような吸着原子・分子系での近藤格子の形成はこれまでにない発見であり、走査トンネル顕微鏡(STM)による分子操作や、吸着FePc分子の配位子の制御が可能であることが期待されることを考え、分子操作についても研究を行った。STMの探針によりFePc分子を移動させたり、COやNO分子を中心の鉄に配位させて近藤状態を変調させることにも成功し、これを格子系にも適用した。
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