本研究は、色素増感太陽電池の光起電力に加え、温度差による熱起電力も組み込み、素子全体としてのエネルギー変換効率をあげた材料を探索するものである。チタン系酸化物を基本材料として、色素増感太陽電池と熱電素子(温度差発電)を組み合わせたハイブリッド素子の作製及び物性評価を目的とする。平成22年度は、主にRFスパッタリング法によりTiO_2薄膜、SrTiO_3薄膜を作製し、酸化還元アニールによる結晶構造・キャリア濃度の制御に関して以下のような結果を得ることができた。 Nb_2O_5粉末を混入した自作SrTiO_3焼結ターゲット材料にてSrTiO_3 : Nb薄膜を酸素無供給下でスパッタリングを行った。この方法で成長した試料は、ほぼ非結晶になっており、成長後に真空中、大気中、または水素(2%)ヘリウム混合気体中でアニール処理することで結晶化を試みた。X線回折とオージェ電子分光分析の結果から、どの雰囲気でもポストアニールにより結晶化することがわかった。真空中でのアニールにおいても結晶が成長することから、非結晶状態で取り込まれている酸素を利用して結晶化していると考えられる。また、還元雰囲気でのアニールは、酸化雰囲気でのアニールよりさらに結晶化しやすく、大きく結晶の歪が解消されることがわかった。これはリアクティブスパッタリング法を用いることなく、SrTiO_3結晶がより安価に成長できる点で重要である。 しかしながら、Nbをドープしたこれらの試料において、結晶中にNbが取り込まれていることを確認したが、電気測定の結果からはキャリアが活性化していることは確認できなかった。TiO_2薄膜については同様に粉末焼結ターゲットによる成膜法でアナターゼ型TiO_2の成膜に成功しているので、TiO_2/SrTiO_3 : Nb薄膜の作製には還元雰囲気のコントロールが今後重要となる。
|