本研究は,色素増感太陽電池の光起電力に加え,温度差による熱起電力も組み込み,素子全体としてのエネルギー変換効率をあげた材料を探索するものである。チタン系酸化物を基本材料として,色素増感太陽電池と熱電素子を組み合わせたハイブリッド素子の作製及び物性評価を目的とする。平成24年度は,酸化物熱電半導体であるSrTiO3:Nbを電極として,色素増感太陽電池を作製することによりハイブリッド素子作製を試みた。 色素増感太陽電池の電極材料にITO,FTO,TiO2:Nb,SrTiO3:Nbの4種類の導電性金属酸化物を用いて,発電効率を比較した。TiO2:Nb(ルチル型)とSrTiO3:Nbは,単結晶バルクを用いた。可視光透過率の小さな導電膜であるTiO2:Nb(ルチル型),SrTiO3:Nbを電極として使用した色素増感太陽電池では,対極から光を照射することにより,発電が確認された。特に,TiO2:Nb(ルチル型)を使用して作製した試料では,従来の透明導電膜と同様のI‐V特性が見られた。ITOやFTOだけでなく,Nbをドープした酸化チタンも色素増感太陽電池の電極として有力な候補の一つであることを示した。 また,SrTiO3:Nbを電極として作製した試料では,TiO2/SrTiO3:Nbの界面状態の影響と思われる短絡電流の低下,フィルファクターの低下はあるものの,I-V特性の結果から,光照射により明確な発電が確認された。さらに同じ試料において,電極のSrTiO3:Nbのゼーベック係数を測定したところ,バルク試料と同等の値であり,熱電素子としても機能することを確認した。 本研究により,色素増感太陽電池・熱電半導体ハイブリッド素子の原型を作製することができた。
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