研究概要 |
ASGQP法を用いて種々の組成を有する急冷体からBi系超伝導ウィスカーの育成を行った。その結果、SrサイトへのCa置換量を系統的に変化させたBi系超伝導ウィスカーが得られることが分かった。そして、SrサイトへのCa置換量が約25%と大きい場合にのみ105A/cm2オーダーの高い臨界電流密度Jcが実現できることが分かった。又、as-grownBi系超伝導ウィスカーの化学結合状態を、光電子分光XPSにより厳密に明らかにした。その結果、表面汚染の影響を避けて観測したCa-2pXPSスペクトルにおいてもCa-2p3/2,1/2それぞれのピークの高束縛エネルギー側にCaがSrサイトに置換することにより生じるピークが観測され、Sr→Ca固溶置換が実際に生じていることが確かめられた。又、CaがSrサイトに置換することによるJc増加の起源を探る為、ウィスカーの局所構造を、高分解能透過型電子顕微鏡を用いた直接観察により明らかにした。その結果、イオン半径がより小さなCaがSrサイトを過剰に占有する事でCuO2面と、それに隣接するSrO面との間の格子不整合が強まることが分かった。これにより、Bi系高温超伝導体に固有であるmodulationの周期が約20%短くなった短周期変調構造が混在するようになった。この部分的に歪んだ構造が多数存在することで、ピンニングセンターとして機能しJc増加につながったものと考えられる。
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