研究課題/領域番号 |
22760033
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
圓谷 志郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 博士研究員 (40549664)
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キーワード | グラフェン / エピタキシャル成長 / ラマン分光 |
研究概要 |
グラフェンへの高効率スピン注入を実現するため、グラフェン/磁性金属接合を利用したグラフェンスピン素子の作製・スピン輸送特性の探索を進めている。昨年度までは、絶縁体単結晶基板上にNi(111)などの磁性薄膜をエピタキシャル成長し、同表面上で超高真空化学気相蒸着法によりグラフェンを成長することにより、グラフェン/磁性金属接合の作製を行った。これにより素子作製に必要な技術を確立することができたので、本年度は、(1)グラフェン/磁性金属界面の相互作用・グラフェンシートの結晶性の評価および(2)グラフェン素子の作製を行った。 (1)グラフェン/磁性金属界面の相互作用・グラフェンシートの結晶性の評価 磁性金属薄膜上に単層・2層グラフェンをエピタキシャル成長し、光電子分光により界面相互作用を調べた。その結果、グララェン1層目と下地との相互作用が1層グラフェンに比べて2層グラフェンでは減少することを明らかにした。また、成長したグラフェンを大面積のシートとして酸化物基板に転写し顕微ラマン分光測定を行ったところ、本研究で成長したグラフェンでは剥離法で作製したグラフェンに比べてドープ状態が均一であることがわかった。これらは、今後グラフェン素子を作製する上で重要な知見である。 (2)グラフェン素子作製 まずはグラフェンの微細加工条件および半導体特性を明らかにするために、電子線リソグラフィーによりグラフェンをチャネルに用いた電界効果トランジスタを作製し伝導特性を調査した。その結果、本研究で作製したグラフェンは高い電界効果特性を示すことを明らかにした。また、本年度までにスピン輸送特性を評価するための装置を製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、グラフェン/磁性金属接合の作製、同接合を利用したスピン素子の作製、スピン輸送特性の探索の3つの段階からなる。これまでにグラフェン/磁性金属接合の作製法を確立し、スピン素子の作製に着手している。今後、素子作製・スピン輸送特性の探索に注力することで当初計画の成果を挙げることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
グラフェン・スピン素子作製およびスピン輸送特性の探索に集中的に取り組む予定である。研究計画立案の際に考案した素子構造では微細加工プロセスが複雑になるため、素子構造の見直しを行う予定である。
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