研究概要 |
本研究は,近接場光を励起するナノ構造の形状を外部からの光場で書換えることができる光反応性分子システムを用いて,全光学的に近接場光の局所励起とその輸送特性を制御する手法を開発することを目的としている。液晶とアゾベンゼン分子を含有する複合薄膜構造を用いて物質系の形状と配向を制御し,光近接場の励起を変調・スイッチング・輸送する近接場インターフェイス機能を開拓することを目指している。本年度は,液晶分子を含有するアゾベンゼン分子複合構造における,光異性化反応によるナノ構造体の自己組織化,およびアゾベンゼン分子のナノ構造を用いた液晶分子の局所的なラビングと分子配向変化により生ずる近接場光学特性について調べた。特に,金属ナノ構造を付加した液晶アゾ分子複合媒質における局在プラズモン励起に注目し,その素過程を明らかにするために,液晶アゾ分子薄膜界面に格子形状に配列させたワイヤー様金属ナノ構造を作製し,液晶媒質により生ずる近接場光励起特性の変化について評価した。ここではアゾポリマー薄膜に近接場光加工したナノ格子構造を用いて,透明導電性基板上に異方性の偏光吸収スペクトルをもつワイヤー状の金属ナノ構造をパターニングし,この金属ナノ構造をラビング層にもつTN液晶セルを作製しその光学特性を評価した。その結果,液晶媒質を配置した金属ナノ構造における局在プラズモン励起が可能であること,液晶媒質により通常では禁制な偏光方向の偏光吸収スペクトルをもつことを実験的に明らかにした。さらに電場印加環境下における金属ナノ構造近傍の液晶分子配向の変化を確認し,外部電場とナノ構造の変形性を用いた局在プラズモン共鳴の変調制御について検討した。またエレクトロスプレー法を用いた液晶粒子生成システムを開発し,近接場光を励起・輸送させる粒径と配列状態を検討するとともにその最適化を進めた。
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