位相分解蛍光寿命測定法のための光学系を構築した。光源には、高速に光強度を変調可能な青色半導体レーザー(中心波長488nm)を用いた。半導体レーザーからのレーザー光は、蛍光励起用と参照信号測定用にビームスプリッターで分離した。励起光は、ダイクロイックミラーで反射させ、蛍光プローブとカルシウムイオンを混合したサンプルに照射した。発生した蛍光と励起光は、ダイクロイックミラーとロングパスフィルターで分離した。分離した蛍光は、光電子増倍管で検出した。オシロスコープで、参照信号と蛍光信号の位相遅れと強度を検出した。参照信号光と蛍光は、検出系による位相の変化が起こらないように全く同じ検出系で検出した。さらに、コンピュータから発振器とオシロスコープを制御できるシステムを構築した。 カルシウム蛍光プロープ(Calcium Orange)とカルシウムイオンを混合して標準サンプルを作製した。カルシウムイオン濃度の調整には、Calibrated Calcium Buffer Kit II (Molecular Probes社製)を用いた。カルシウムイオン濃度は、0~39μMとした。これは、細胞内のカルシウム濃度と同等である。構築した光学系を用いて、これら標準サンプルの蛍光寿命を測定した。半導体レーザーの強度は、周波数120MHzの正弦波で変調した。その結果、位相差の変化は、46から73度であった。カルシウムイオン濃度が低いと蛍光寿命が短くなり、カルシウムイオン濃度が高いと、蛍光寿命が長くなることが分かった。カルシウムイオン濃度が10~2000nMのときに、位相差が大きく変った。これは、生体のカルシウムイオン濃度と同程度である。そのため、Calcium Orangeは、本手法によるカルシウムイオン濃度測定に適していることが分かった。
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