昨年度のカルシウムイオン濃度の測定を実際の細胞に応用するため、カルシウムイオン測定におけるタンパク質の影響を測定した。ウシ血清アルブミン(BSA)を含む緩衝溶液で蛍光プローブcalciumorangeの蛍光寿命とカルシウムイオン濃度の関係を測定した。その結果、細胞内のタンパク質濃度(65-90mg/g)では、カルシウムイオン濃度と蛍光寿命との関係は、BSA濃度に依存していないことが分かった。さらに、NG108-15細胞のカルシウムイオン濃度を測定した。細胞をブラジキニンで刺激を与え、そのときの細胞内のカルシウム濃度変化を測定することができた。 次にマグネシウムイオンの測定を行った。蛍光プローブにmagnesium greenとmag-fluo-4を用いた。MgCl_2(純水溶媒)をレコーディングメディウムに加えて蛍光寿命の測定を行った。Mg^<2+>濃度は0.5から250mMとした。実験結果から、上記の2つの蛍光指示薬で20から250mMのMg^<2+>濃度を測定することができることが分かった。 カルシウムイオン測定と同様に、マグネシウムイオン測定に対するカルシウムイオンとタンパク質の影響を調べた。カルシウムイオンを加えると、蛍光寿命が変化した。その変化は、magnesium greenの方がmag-fluo-4に比べ大きかった。タンパク質(BSA)を加えると、magnesium greenの蛍光寿命が変化した。タンパク質の濃度を上げると、蛍光寿命は徐々に短くなった。それに対して、mag-fluo-4の蛍光寿命は、タンパク質を加えてもほとんど変化しなかった。 本手法により、カルシウムイオンとマグネシウムイオンが測定出来ることが分かった。タンパク質や他のイオンの影響を補正することで、細胞内のイオン濃度の高精度な測定が可能である。
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