フッ化物ガラスファイバーを用いた高強度中赤外光パルスの発生・増幅の基礎技術の開発を目的とし、本年度は以下の二項目について実験実証を行った。(1)高出力広帯域波長可変ファイバーレーザー発振器の開発:中赤外光パルスの短パルス化にはより広い波長帯域で高い光利得が得られることが望ましいが、他の研究グループがこれまでに得た帯域幅は約2800ナノメートルの中心波長において130ナノメートル程度であり、光出力も2ワット程度に過ぎなかった。本研究で開発した光ファイバ放熱システムにより光ファイバの温度を低く抑えた結果、世界最高値である170ナノメートルの帯域幅と11ワットの光出力を達成した。(2)高ピーク出力パルスファイバーレーザー発振器の開発:共振器のQ値を高速に変化させることによりジャイアントパルスを発生させ高いピーク出力を得る技術は一般的であるが、2800ナノメートル帯の中赤外ファイバーレーザーでは実証例が少ない。音響光学素子を用いたパルス発振ファイバーレーザー発振器を開発し、約50ワットのピーク出力と1ワット以上の高い平均出力を得た。パルス幅は最短で250ナノ秒、パルスエネルギーは約16マイクロジュールである。今後の短パルス化により1000ワット以上の高ピーク出力が期待できる。以上の成果により、フッ化物ガラスファイバーレーザーの短パルス高強度化および高平均出力化に関する重要な基礎技術の一部が確立した。本研究成果の一部は米国光学会のOptics Letters誌に掲載された。
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