研究概要 |
4次ラマン散乱分光法は、4次の非線形光学現象であるため非中心対称性物質にのみ選択性を持ち、且つ、分子振動により詳細に分子情報を得ることができるため、溶液の影響を受けずに気液界面の分子の状態を観測するなど、界面に存在する分子の選択計測が可能な分光法である。従って、細胞膜界面に存在する細胞膜タンパク質の選択的計測が可能であると期待する。 本研究では、細胞膜タンパク質の空間分布をイメージングする事を目的とし、4次ラマン散乱分光顕微鏡の開発を行なった。このとき、励起光にスーパーコンティニュアム(SC)光を利用し、複数の分子振動情報を同時に得ることが可能なマルチプレックス4次ラマン散乱分光顕微鏡顕微鏡とした。 細胞膜タンパク質の計測に先立ち、4-ジメチルアミノ-N-メチル-4-スチルバゾリウムトシレート(DAST)結晶の顕微4次ラマン計測を行なった。DAST結晶は非中心対称性物質であり、非線形光学定数が高いために4次ラマン計測が容易で、作製した顕微鏡装置を評価する際の試料として用いた。結果、ラマン活性かつハイパーラマン活性なトシレートの環呼吸振動(1170cm^<-1>)、CH,の分子振動(1347cm^<-1>)、スチルバゾリウム発色団の芳香環間の二重結合(C-C=C-C)の分子振動モード(1577cm^<-1>)が、反ストークスハイパーラマン領域に現れ、DAST結晶の4次ラマンスペクトルを取得することができた。また、1170cm^<-1>の4次ラマンピークを用いて、4次ラマンイメージの取得に成功した。
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