研究概要 |
前年度までに,高繰り返しフェムト秒レーザ露光により生じる化学増幅型レジストの特異的な屈折率増大について研究を行い,露光部で生じる導波モードへの結合が露光分解能の劣化に深く関与していることを実験と理論両面から示した.本年度は,この露光分解能劣化の回避手法について検討を行った.高開口数レンズ集光では,露光分解能の顕著な劣化は観察されない.光回折実験から高開口数レンズでの露光時のレジストの屈折率変化量を測定したところ,低開口数レンズ露光に比べ,変化量および変化の傾向に大きな違いは見られなかったが,光改質部のサイズは半分程度にまで小さくなった.理論モデルから,露光部と周囲の屈折率差が一定の条件下で,コア領域サイズを小さくしていくと,導波光の電界分布は逆にブロードになった.このため,波長程度まで集光された入射レーザ光との電界分布の不整合が大きくなり,導波モードへの結合効率が低下したと考えられる.この結果,導波光のピーク強度が小さくなり二光子反応が抑制されたと推定される. 昨年度までに作製したオフアクシス集光型回折レンズ内装マイクロ流体素子によるセンシング特性の理論的評価を行った.同素子では,回折レンズ直上に配置された流体試料の物性変化を回折パワー変化として検出する.入射軸と集光軸をオフアクシス化するため,回折レンズは徐々に格子周期が変化した構造を有する.このため,レンズの位置によって回折効率が異なる.このことを考慮して理論解析を行ったところ,構造の最適化により波長633nmのプローブ光に対し,10-7オーダもの屈折率変化が検出可能であることが明らかとなった。
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