プラズモン共鳴の光電変換系への応用を目的として、平成22年度ではとくに局在プラズモン共鳴の新規探索、共鳴状態の解明を中心に研究を実施した。光の波長よりも小さい空間スケール(サブ波長スケール)においてプラズモン共鳴を制御することにより、光電変換系サイズの極小化が可能になると考えられるから、金属のサブ波長構造におけるプラズモン共鳴を対象として、透過率・反射率などの光学応答の実験的・数値計算的評価、共鳴状態の数値計算による可視化を行い、共鳴状態の詳細を明らかにした。具体的な構造としては、相補的な2つの層を近接させた積層構造を作製する相補的積層構造を集中的に検討し、プラズモン場で結合させて、回転磁場型、回転電場型の新しい局在プラズモン共鳴が発現することを見いだした。これらはサブ波長スケールにおける新たなプラズモン状態であり、極小空間において共鳴電磁場分布を操作できることを示す結果である。この相補的積層構造は光の偏光状態を選択的に操作することができ、サブ波長の厚さで数センチメートル厚さのプリズムと同等以上の性能を有することも明らかにした。また、円偏光の操作もサブ波長構造の複合的積層構造によって可能であることを示した。このように極小サイズの構造でありながら、既存の光学素子に遜色ない光操作性を有する構造を見いだしたことは今後のサブ波長光電変換構造の具体的設計、作製を肯定的に支持する結果であると言える。以上の結果を論文3報(いずれも査読有)に発表し、さらに特許出願1件も行い、成果の発信にも努めた。
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