昨年度計測した光パラメトリック増幅(OPA)における相互作用光の位相計測結果を元に、広帯域アイドラー光の数サイクルパルスまでのパルス圧縮に必要な残留高次分散補償の検討を行った。位相計測結果からはアイドラー光残留3次分散の補償に必要なポンプ光3次分散は10^9fs^3程度と見積もられた。しかしながらこの分散値は非常に大きく、パルス圧縮器回折格子間隔調整(パルス圧縮器全長で6.75x10^8fs^3)やブリズム対調整(1m間隔で-10^3fs^3程度)では補償困難であった。このため本研究ではポンプ光の光路に空間光変調器を導入し、変調器での位相操作により分散補償を行うことにした。 空間光変調器は溝本数1800本/mmの回折格子対及び焦点距離200mmの凹面ミラー対から構成され、0.04nm/ピクセルの波長変調分解能を有し、2次分散で10^7fs^2、3次分散で10^9fs^3レベルの変調が可能である。導入した空間光変調器に10^8~5x10^9fs^3の正負3次分散が印加される様ポンプ光の位相を変調してOPAで発生するアイドラー光の位相の計測を行い、アイドラー光3次分散の変化を計測した。その結果、ポンプ光に正の3次分散を与えたときアイドラー光の3次分散が増加し、負の3次分散を与えたときアイドラー光の3次分散が減少する傾向を確認した。このことはポンプ光の任意位相変調で発生アイドラー光の3次分散制御が可能であることを明確にした結果であり、今後ポンプ光のリアルタイム位相計測とパルス圧縮実験をリンクさせることにより超広帯域OPCPAにおいてアイドラー光の高次分散補償による高強度数サイクルレーザー光の発生を可能にする重要な成果を得ることができた。
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