研究課題/領域番号 |
22760050
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中村 俊博 群馬大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90451715)
|
キーワード | 半導体 / ランダムレーザー / 表面プラズモン |
研究概要 |
平成23年度は、本研究課題の第一目標である、半導体微粒子ランダム媒質・金属ナノ構造からのSPP誘導放射の検討を行った。その結果、金ナノ粒子の表面プラズモンによりアシストされた窒化ガリウムランダムレーザー発振現象の観測に成功した。詳細は次の通りである。直径約数ナノメートル程度の金ナノ粒子を、真空蒸着法により、窒化ガリウム粉末(直径約200ナノメートル)の表面に堆積させた試料を作製した。この試料に、あるしきい値を超えた励起励起光を入射すると、窒化ガリウムのバンド端エネルギーに対応する紫外領域(波長約375ナノメートル付近)に、半値幅約0.5ナノメートルに非常に先鋭化した、レーザー発振光が観測された。これは、金ナノ粒子が存在しない試料では観測できなかった。この堆積した金ナノ粒子は、赤色領域(波長約600ナノメートル)で、金粒子内の局在型表面プラズモン励起に起因する特異な吸収が見られる。この紫外域でのランダムレーザー発振を観測した。これは、窒化ガリウムの欠陥準位のエネルギーに対応していることから、金粒子の表面プラズモンと窒化ガリウムの欠陥準位発光がカップリングし、励起された表面プラズモンから窒化ガリウムにエネルギー移動することで、窒化ガリウムの自然放出割合が著しく増強し、さらに、窒化ガリウム粉末表面での強い散乱過程を経て、レーザー発振が生じていることがわかった。この金ナノ粒子にアシストされたランダムレーザー発振特性を、詳細に調べた結果、しきい値は、他で報告されているZnOランダムレーザーのしきい値と同程度であった。また、スペクトル形状のフーリエ変換から求めた、レーザー発振のために形成されるランダムキャビティのサイズは、5マイクロメートルで、粉末のサイズに較べて十分大きいことがわかった。また、金ナノ粒子・窒化ガリウムランダムレーザー発振の空間分布を詳細に解析し、レーザー発振が特定の粉末の凝集体の内部で生じており、凝集体のサイズに依存して、レーザーの発振モードや強度が変化することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度実施した、以降の研究の準備段階である、種々の半導体材料でのランダムレーザー発振現象に関する研究で得た知見が十分生かされ、表面プラズモン共鳴エネルギーと半導体の遷移エネルギーとの効率的なカップリングをさせることに成功したために、本年度の研究目標であった半導体微粒子ランダム媒質・金属ナノ構造からのレーザー発振現象に関する研究を順調に進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究目標であった半導体微粒子ランダム媒質・金属ナノ構造からのレーザー発振現象に関する研究を順調に進めることができたので、来年度は、表面プラズモン誘導放射のナノレーザーへの応用に関する研究に移ることを予定している。今年度は、表面プラズモンとカップリングした窒化ガリウムランダムレーザーは、マイクロメートルオーダーの領域からの発振であり、来年度目標とするナノメートル領域からのレーザー発振(ナノレーザー)のために、さらなる金属ナノ粒子の形状のチューニングが必要であると考えられるので、これを進める予定である。また、今年度は局在型の表面プラズモンを用いたが、伝搬型の表面プラズモンも併用した系での実験も進めていく予定である。
|