研究概要 |
宇宙用半導体コンプトンカメラを分子イメージングに応用するためには、線源の3次元的な分布を画像化することが必要である。2014年打ち上げ予定のASTRO-H衛星搭載のコンプトンカメラをベースとして、3次元撮像のための最適な検出器配置や画像再構成法に関して、粒子追跡法によるシミュレーション研究を進めた。撮像対象の周りにリング状に検出器を配置することで、正八面体の頂点に配置した6つの点線源を、2-3mm程度の空間分解能で正しく再構成できることがわかった。実験的に実証するために、3次元構造をもつファントムをコンプトンカメラに対して高精度で回転させ、リング状配置により得られるデータを模擬した疑似データを取得して解析を進めたところ、834keVのガンマ線に対して線源の断層画像を得ることに成功した。このようなシステムが実際に小動物撮像に有効であることを実証するために、ヨウ素(I, 364keV)とストロンチウム(Sr, 514keV)をマウスに同時に投与して、6時間イメージングしたデータの解析を進めた。その結果、ヨウ素が甲状腺、腹部、生殖器に集積すること、ストロンチウムが頭蓋骨、背骨、骨盤に集積することを画像化することに成功した。特に、ガンマ線のエネルギーの高いストロンチウムの集積を精度よくモニタリングすることは、従来機器では不可能であったことである。これらの成果は、宇宙用機器が分子イメージングの領域でも極めて有望な検出器であることを示すものである。
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