平成22年度に進めたモンテカルロシミュレーションに基づいて、プロトタイプ機の製作と性能評価をおこなった。プロトタイプ機は次期X線天文衛星ASTRO-Hの硬X線検出器(HXI)検出器をベースデザインとするもので、両面シリコンストリップ検出器(Si-DSD)と両面カドテルストリップ検出器(CdTe-DSD)から構成される。素子のストリップピッチは250μm、サイズは3.4cm角、厚さは0.5mm(Si-DSD)、0.75mm(CdTe-DSD)である。平成23年度前半には、素子と読み出しアナログASICをマウントした検出器トレイの単体動作チェックを進めた。コンプトンカメラとして組み上げたときに、システムを安定して動作させるためには、この段階での検出器トレイのスクリーニングが重要である。特に、CdTe-DSD検出器のスペクトル性能と歩留まりとを考慮して、スクリーニング条件を決定する作業を進めた。結果として、15℃において250Vのバイアスを印加した状態で、動作テストを行うことが、スクリーニングに有効であることがわかり、長時間スペクトル安定性を備えたCdTe-DSD検出器を効率よく選び出すことができるようになった。平成23年度後半には、単体動作試験をクリアした検出器トレイを積層し、Si-DSD2層、CdTe-DSD3層の計5層からなる、コンプトンカメラプロトタイプ機を製作した。点線源を用いた評価試験をすすめ、角度分解能、検出効率、視野など基礎パラメータの測定をおこなった。コンプトンカメラによる3Dイメージングを実現するには、複数台のコンプトンカメラで被写体を多角度から撮像する必要があるが、これまでに3台のプロトタイプ機を製作した。
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