研究概要 |
錐制約をもつ半無限計画問題に対するアルゴリズム開発という観点で見ると,22年度に得られた成果としてまず挙げられるのが,既存のアルゴリズムを非線形バージョンへと拡張したということである.実際,本研究代表者が2009年に発表した論文では,二次錐制約を含む『線形な』半無限計画問題を対象としたものであった.今年度は,特に8月,9月の時期にWu教授(台湾・成功大学)と共同研究を集中的に行い,既存の結果を『非線形な』凸関数を含む問題へとアルゴリズムの対象を拡張した.得られた成果は12月に上海で行われた国際会議(ICOTA2010)にて発表し,フィルタ設計以外の応用も可能であるという指摘を受けた.今後とも,この手の問題の応用範囲はますます広がるものと期待できる. もう一つ特筆すべき成果として挙げられるのが,『無限個の錐制約』をもつ半無限計画問題に対して,陽的交換法と正則化法を組み合わせた手法を開発したことである.こちらは博士課程学生の奥野貴之氏との共同研究であるが,これまでの錐制約をもつ半無限計画問題に関する研究の殆どが『有限個の錐制約』と『無限個の不等式制約』を含む問題を取り扱ったものであったのに対し,本研究では,錐制約をも無限個のものとして拡張したところが特筆すべき点である.一般的なフィルタ設計問題では,制約条件が無限個の複素関数で特徴づけられることがよくあるが,そのような問題に対して,特別な仮定を置くことなく定式化をすることが可能であるという点が本研究の一つの意義であるといえる. さらに,『錐制約を含む』問題の応用として,二次制約を含む分数計画問題に対するアルゴリズムの開発結果を,Zhang氏との共同研究成果として投稿論文にて発表した.こちらは,アルゴリズム中の部分問題が,半正定値計画問題という一種の錐制約をもつ最適化問題となっている.
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