研究課題
自動車触媒の耐久性能は実験的手法で評価されており、耐久後に高耐久品が絞り込めても、なぜ耐久できるか理論的に説明できなかったり、浄化性能は良いが耐久基準は未達であるなど、品質を向上させるにも意外と苦労させられるのが現状である。その上、回収作業に手間取る貴金属を幾つもの耐久サンプル数に注ぎ、日夜、時間と人的労力をかけ、システムにかかる燃料と電気の省エネの観点からも、試行錯誤を繰り返す耐久手法そのものが再考に迫られている。そこで、理論的代替手法が望まれているが、「時間」「温度」といった耐久を論ずる根幹を成すパラメータを欠く致命的手法ばかりが従来手法であり、これに頼る事は論外である。一方、本研究では、貴金属/担体触媒の界面で互いにどう影響し合いながら経時的な劣化現象へ導かれるかを、界面を包括するミクロモデルから粒子レベルのマクロモデルに繋げ、マルチスケールなモデリングにより一貫して理論的に経時劣化を有限温度下で予測・解明しようとする点が世界的に見ても独創的な点である。H22年度は、担体である金属酸化物中の拡散種の拡散速度を、貴金属/担体界面を含むミクロモデルで量子化学計算により非経験的に求める事で、決まった成分に適用可能だった経時劣化シミュレータ(2008~2009年度課題No.:20860006:自動車触媒の経時劣化特性シミュレータの開発)を、様々な触媒モデルへと普遍的に適用できるようにした。並行して、ウォッシュコート触媒層内部の形状に依存して異なる、反応ガス成分の拡散速度を算出する手法の原型を予備的に開発した。本手法は、反応ガスが触媒層内部を通過する際、実験で導出できない多孔質中の微細構造に由来する形状因子、屈曲度を反映した拡散係数を算出する手法である。反応ガス成分の拡散係数の定量評価を可能とする本手法は、空隙率、細孔構造が異なる様々な形状の触媒構造に適用できる事を実証した。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) 図書 (1件)
International Journal of Hydrogen Energy
巻: 36 ページ: 2221-2229
International Journal of Electrochemical Science
巻: 5 ページ: 1948-1961
SAE International Journal of Fuels and Lubricants
巻: 2-2 ページ: 337-345