本年度は前年度で開発した時空間位相シフト法と構築した計測システムをベースに、産業分野における半導体パッケージの三次元形状および温度変化に伴う反り分布の変形計測へ応用し、以下の研究成果を得た。 (1)ミクロン精度の三次元形状計測 前年度で構築した格子投影装置にシャインプルーフの光学系を適用し、被写界深度を拡大することに成功した。従来斜め方向から格子を投影する方法より奥行きのある物体でも計測することができた。加えて、光源用ライトとして熱を発するハロゲンランプの代わりに、計測時のみ照射する高輝度LED光源を採用したことで、熱による格子表示の光学素子の変位や冷却ファンによる振動問題を解決した。さらに非線形最小二乗法を用いた位相・高さのキャリブレーション法を新たに開発し、位相と高さの対応付けの誤差を大幅に低減することができた。以上の計測装置と解析手法の改善により、格子投影法における計測精度を大幅に向上することができた。視野50角、奥行き6ミリの測定エリアにおいて、作製したシリコンウェハの段差試験片を測定した結果では、10×10画素の領域の平均値の誤差が4ミクロン以内、標準偏差が1ミクロンとなり、ミクロンオーダーの形状計測精度を達成した。 (2)サブミクロン精度の微小変形分布計測産業分野におけるミリスケール寸法の構造体の変形計測の応用例の一つとして、50ミリ角サイズの半導体パッケージの温度依存の反り分布計測に適用した。室温から200度の加熱時の反り分布変化を動的に計測することに成功した。また同じ温度のもとで連続的20回計測した結果、10×10画素の領域の平均値のばらつきの標準偏差は0.3ミクロンであり、サブミクロン精度の微小変形計測精度を達成した。本計測手法および測定装置は製造ラインの品質管理をはじめ、電子産業分野の新規材料開発における信頼性評価に利用できる。これらの成果は当初予定していた研究計画を達成している。
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