研究概要 |
本年度は,二次元培養下の一軸伸縮の機械的刺激によって骨髄由来間葉系幹細胞から発現する細胞外マトリックスの構造とその発現量に関して,異なる伸展率と伸縮時間の影響を検討した.8%,10%の伸展率に対し,それぞれ24h,48hの伸縮時間の四種類の条件で培養を行い,細胞外マトリックスの構造の違いを蛍光抗体染色法による顕微鏡観察で,その発現量の違いを吸光度測定法で比較した.注目した細胞外マトリックスの成分は,腱組織の主成分であるI型コラーゲンおよびTNCである.そして,以下の結果を得た.(1)骨髄由来間葉系幹細胞から腱細胞への分化,およびI型コラーゲン,TNCの生成を確認した.伸縮時間が長くなるにつれそれらたんぱく質の発現量は増加し,特にTNCは著しく増加する傾向が見られた.また,それらたんぱく質の発現量は伸展率8%が最適であった.(2)発現したI型コラーゲン,TNCは細胞外マトリックスを構築せず,培養液中に溶解する結果となった.その傾向はTNCで著しく見られ,I型コラーゲンでは若干のネットワーク構造の構築が観察された.(3)細胞外マトリックス成分の発現量の観点からは伸展率8%,伸縮時間48hが最適であった.しかしながら,細胞外マトリックスの構築,すなわちI型コラーゲンのネットワーク構造の生成の観点では,伸展率10%,伸縮時間48%が最も適していた.これは,細胞外マトリックスの発現とその組織の構築の間には異なるひずみ依存性が存在することを示唆するものである.
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