研究概要 |
本研究課題では,材料特性が材料内部で傾斜分布する発泡性複合樹脂材料の開発を行い,既存の材料では得られない変形形態を利用したエネルギ吸収材への応用について検討行っており,本年度に実施した研究内容および成果は,以下の通りである.まず,軽量な中空微粒子をマトリクス樹脂内に傾斜分布させた傾斜機能を有するシンタクチックフォームの一体成形法を確立した.この成形法は重力場における中空微粒子の浮上現象を用いた簡便な手法であり,中空微粒子の充填量および初期の空間分布を変更することにより,密度の連続的あるいは段階的空間分布を得ることが可能となった.また,エポキシ樹脂に樹脂製中空微粒子を充填した傾斜機能シンタクチックフォームに対して動的粘弾性測定試験および圧縮試験を実施し,作製した傾斜材料内の局所的な力学的特性が密度の二次式で近似できることを明らかにするとともに,材料内部の力学的特性分布を求めた.さらに,弾性係数および降伏強度が材料内部で変化する場合,圧縮荷重下において低密度領域から降伏現象が開始し逐次圧潰が誘起され,エネルギ吸収特性の向上および制御が可能であることを示した.すなわち,材料特性の空間分布に依存する不均一変形を積極利用することにより新規のエネルギ吸収材として適応可能であることがわかった.さらに,マトリクス樹脂の改質剤としてナノ微粒子を追加充填したハイブリッド型傾斜機能樹脂材料の成形法の開発を行った.ナノシリカ粒子をマトリクス樹脂内に均等に分散させ,中空微粒子のみを傾斜分布させることが可能であり,発泡材料の特性を損なうことなくマトリクス樹脂を強化できることがわかった.
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