本研究では,放射光CTイメージング技術を拡張した,結晶粒形状および結晶方位を三次元的に可視化する結晶3D マッピング法とCT イメージングを用いたクリープボイドの三次元定量評価法を用いてクリープ損傷を評価することも目的とした. 平成24年度では,これまでの研究において構築した結晶3Dマッピング法を,疲労損傷評価に適用することを試みた.平成23年度では静的な引張負荷を与えたサンプルに対して同手法を適用し,塑性変形に伴って回折の拡がり角が大きくなることを明らかにしている.そこで繰返し負荷を与えながらその場で結晶マッピングの測定を行い,繰返し負荷による影響を観察した.その結果,繰返し数の増加と共に回折の拡がり角が大きくなる様子が観察された.静的な引張負荷時のようにすべての結晶において回折の拡がり角の増加が見られたのとは異なり,一部の結晶において回折の拡がり角の増加が見られた.さらに回折スポットごとに回折面を同定して,回折面ごとの回折の拡がり角を算出した結果,主すべり系の回折面で回折の拡がり角の変化が主に現れていること,表面に近い結晶において変化が大きいことなどが分かった.回折の拡がり角は結晶内に転位が導入されることによる結晶の湾曲によるものと考えられ,結晶3Dマッピング法により局所的に疲労損傷が蓄積されている様子を三次元的に可視化することに成功した. 欠陥の三次元定量評価法としては,転動疲労き裂を対象として,き裂進展挙動の三次元形状の抽出を試みた.小型の転動疲労試験機を開発し,一本の試験片に対して転動疲労過程におけるき裂発生および進展挙動の観察を試みた.人工欠陥を導入したサンプルについて本疲労試験機を用いて連続的なCT観察を行った結果,人工欠陥からき裂の発生および進展を観察することに成功した.
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