高強度・高靭性アルミニウム合金鋳物を作製するために一方向でアルミニウム合金を連続的に急冷凝固させる鋳造機を製作した。この鋳造機を用いて様々なアルミニウム合金を作製し、組織構造及び材料強度特性について調査した。アルミニウム合金の成分の相違により鋳造性は異った。流動性がよい材質ほど鋳造が困難であり、粘性の高い材料では鋳造しやすいことが判明した。この結果、鋳造性は、この一方向連続鋳造法と一般的な重力及び圧力鋳造では相反することがわかった。 一方向連続鋳造で作製したサンプルの品質について調査した。調査の結果、一般的な鋳造サンプルにみられる「空気の巻き込み巣」「ひけ巣」「介在物」「異常組織」等の欠陥はほとんど確認できなかった。また一方向連続鋳造サンプルの鋳造組織は球形状のα-Al相と微細な共晶組織で構成されていた。さらにこのサンプルについて結晶方位を電子後方散乱回折法で分析した結果、単結晶のように、ほぼ一方向に揃っていることが確認できた。 材料強度特性について調査した。ここでは、同じアルミニウム合金(例えばAC4CH、ADC12など)を一方向連続鋳造と一般的な重力鋳造法及びダイカスト法で作製して比較調査した。まず一方向連続鋳造材の引張強さと疲労強度は一般鋳造材より1.5倍以上増加することが確認できた。また鋳造欠陥の混入量が低いため、一方向連続鋳造材の延性も高い値を示した。得られた研究結果は、学術論文及び国内外の学会で発表した。
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