昨年度、高強度・高靭性アルミニウム合金鋳物を作製するために一方向でアルミニウム合金を連続的に急冷凝固させる鋳造機を開発した。今年度は、この鋳造機を改良して、冷却速度(鋳造速度)を自由に調整できるようにした。また、この鋳造機を用いて材料特性に関する研究を行った。 ・様々なアルミニウム合金について鋳造し、組織構造と材料強度特性について調査した。ここで使用したアルミニウム合金は、JISで規定されている約10種類の材料である。材料強度特性は、JIS材と比較して、1.5倍以上増加することが確認できた。また延性も強度と同様に高い値を示した。これは組織の微細化と一方向に揃った結晶方位が原因と考えている。 ・冷却速度と素材品質の関係について調査した。冷却速度が増加するにあたり、結晶方位はランダム化することが判明した。またこのランダム化に伴い、内部ひずみが増加することを確認した。 ・材料成分が及ぼす品質の影響について調査した。特にAl-Si系とAl-Mg系アルミニウム合金では結晶の方向性が異なった。Al-Si系の方が、一方向に結晶が揃いやすいことが判明した。具体的な原因については、現在調査中である。 ・素材の腐食性についての調査した。ここでは耐食性の優れているAl-Mg系合金について調査した。この結果、連続急冷凝固で作製した鋳物の耐食性は、同合金・重力鋳造材より優れることが判明した。これは組織の微細化及び強制固溶による材質の変化が原因と考えている。
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