研究概要 |
チタン合金は生体機能性を備えていないので,骨を引き寄せ,協調し融合する骨伝導能の付与が不可欠である.そこで,チタン合金表面に最適な凹溝空間を設け,熱処理を施せば体内で自発的にアパタイト核が析出・形成する骨伝導能付与技術の構築を目指し,本年度は下記の事柄について研究を行い,それぞれの成果を得た. 骨欠損部に埋入された同材が骨と直接結合するためには,その表面で骨類似アパタイト層の形成,すなわち,骨伝導能の付与が必要である.ここでは,擬似体液中で自発的にアパタイトが析出する骨伝導能の付与を,凹溝形状による空間デザインについて検討した.それには,熱処理による水酸基(OH^-)の形成が,かかる表面と擬似体液との反応が重要である.すなわち,析出反応の促進を空間の大きさ,つまり,凹形状とすることでかかる濃度(pH)を高めることを意図している. (1)凹溝形状を変化させた造形材を作製した.その際,凹溝幅と高さの検討を通じて,積層造形可能な限界空間の程度を検討した. (2)擬似体液下で最適な空間から析出するアパタイトの結晶成長速度及び組織学的評価を行った.具体的には,アパタイト核の発生から成長過程の空間的・時間的高倍率観察と結晶構造解析による存在状態を把握した.次年度は,これらの空間デザインが析出反応に関与するメカニズムを明確にする. (3)最適な熱処理条件を400℃~600℃の範囲で検討した,すなわち,水酸基の化学結合状態(ルチル型,アナタース型)がアパタイト析出能に及ぼす影響を評価した.また,この温度は強度特性を向上させるための温度でもあり,力学的な観点と併せた総合的な評価した.
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