研究概要 |
本研究で使用するレーザ焼結型積層造形機(既設)の原理は,他の積層造型機と同様,三次元形状を多数の積層面に薄層化し,一層毎に粉末材料を撒き,形状断面部にレーザビームを照射し,その熱でレーザ照射された部分を硬化させる.これを繰り返すことにより三次元形状を積層造形する.ここでは,Ti-15Mo-3Zr-3Al合金および比較材であるTi-6Al-4V合金の微細構造と高力学化の観点から以下の通り遂行した.また,造形機のレーザ照射とは別に,電子ビームで積層造形したTi-6Al-4V合金についても併せて評価した.とくに,レーザと電子ビームとでは,ビームの線径が異なることから,造形物に対して微細な形状や大まかな形状に対して異なってくる.また,造形時間にも関わり,ひいては製造コストに繋がる点からも,各照射源から造形される素材についての力学特性および形状を考慮した生体適合1生の評価は重要である. (1)構造:積層造形材の結晶構造の解析を,微小部X線回折装置(既設)を用いて行った.また,ミクロな結晶方位分布をEBSD(既設)を用いた結晶方位解析については,不動態皮膜の再生能に優れた本素材の結晶方位分布についての技術的な試料作成から分析までは困難であり,解析はできていない状況である.しかしながら,その他の,空間的・時間的高倍率な微細組織については,既設の各観察装置にて詳細に観察することができた. (2)力学:レーザ照射にて積層造形した材料は焼結材であり,通常の鍛造品に比較し力学特性は異なると予想されたが,基本的な力学特性である強度,延性については従来材と同程度の特性を有していた.このことは,電子ビーム造形材につても同様であった.しかしながら,疲労強度等については,従来材に対して極めて低いことがわかり,これについては強度向上の手法の提案が必要であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザ溶融積層造形法により低弾性β型Ti系合金の造形・作製については行うことができている.そして,同材の結晶構造の解析と組織構造の観察,基礎的な力学特性の評価,強度向上に関する最適熱処理条件の把握についても検討している.骨伝導能の観点からは,凹溝形状を変化させた造形材の作製と,擬似体液下で空間の大きさがアパタイト析出能に及ぼす影響について評価した.残る課題としては,空間デザインを施した造形材の疲労寿命評価であり,H24年度に総合的に評価を行う.
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今後の研究の推進方策 |
電子ビーム造形された素材には,製造上の欠陥を含んでいる.一般的な力学特性や生体適合性には直接的な影響を与えないので,あまり問題とはならない.しかしながら,疲労特性には影響を及ぼす可能性がある.すなわち,その製造上の欠陥を起点として,疲労亀裂の発生,進展へと繋がる.したがって,生体適合性に優れていても,実使用の観点からは,検討すべき課題である.したがって,欠陥の大きさ,分布はもとより,欠陥をなくすプロセスあるいは,造形材の改質手法の提案などが必要と考えられる.また,空間デザインされた凹凸溝も破壊に起点になることが考えられる.製造からの微細構造の観点とデザイン的な側面から疲労特性について検討する必要があると考えられる.
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