研究概要 |
最終年度は,前年度の課題となった疲労強度の低下について取り組んだ.前年度の結果より,レーザ照射にて積層造形した材料は焼結材であるが,通常の鍛造品に比較しても力学特性は同程度であった.しかしながら,疲労強度等については,従来材に対して極めて低いことがわかった.したがって,これを改善しないと,実用に適することは困難なことから,この点について検討を行った.本来であれば,最適熱処理条件との関連についても検討し,空間デザインが骨伝導能に及ぼすその役割と効果を明確にすることを目的としたが,若干の変更を行った.前者の最適熱処理条件の観点からは,これにより,製造欠陥を削除することを考えた.しかしながら,熱処理によって,製造時にできる欠陥を取り除くあるいは,小さくするなどの工夫で疲労強度を改善することはできなかった. 次に,HIP処理による疲労強度の向上を検討した.これについては,一定の改善効果があることがわかった.有限寿命域においては,疲労寿命の向上が確認された.しかしながら,10,000,000回における疲労強度の改善までは認められなかった.また,HIP無し材に比べてHIP処理材の破壊形態は異なることがわかった. また,本研究の疲労荷重付与の条件が一軸引張り荷重であることも,疲労特性が向上しない原因であることがわかった.つまり,曲げ荷重などの応力分布を有する荷重条件であれば,疲労強度が向上することが認められた. 今後は,最適空間デザインを施した造形材の疲労強度に荷重条件がどの程度影響するかを検討する必要がある.すなわち,製造欠陥を完全に取り除くことは不可能であることから,許容できる欠陥サイズと疲労特性との関係を明らかにすることで,カスタムメイド型人工関節の適用に効果を発揮するものと考えられる.
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