研究概要 |
本研究では,新規無鉛圧電材料の高性能化と最適創製条件を探索するため,モルフォトロピック相境界において巨大圧電性を発現する新規ペロブスカイト化合物の複合化設計と,第一原理計算とランダウ現象論を融合した実践的創製支援シミュレーションを目的とする.本年度の研究実績は下記の3項目に大別される. 1.複合ペロブスカイト化合物の物性評価 前年度に第一原理計算により探索した複合ペロブスカイト化合物ABO3の有力候補に対して,ソフトモードに誘起される非対称安定構造における物性を評価した.また,これまでに検討した単一サイトの複合化から,AおよびBの両サイトの複合化に発展させ,巨大圧電特性を発現する新たな複合ペロブスカイト化合物を探索した結果,(Ca,Ba)(Ti,Zr)O3 ,(Mg,Ca)(Si,Sn)O3や(MgCa)(Ge,Sn)O3が有力であることが判明した. 2.エネルギ関数の構築と状態図の予測 ペロブスカイト化合物を対象として状態変数を格子不整合ひずみ,秩序変数を自発分極としたエネルギ関数を構築した.すなわち,次数の上限を6として,状態変数および秩序変数の係数とそれらのカップリング係数を考慮し,ソフトモードに誘起された非対称構造に対して係数を同定した.構築したエネルギ関数に基づいて既存材料の状態図を計算し,その妥当性を確認した上で,新規材料に応用した. 3.スパッタ薄膜創製実験 RFマグネトロンスパッタにより複合ペロブスカイト化合物の成膜を試みた.前年度に検討したペロブスカイト型酸化物基板(SrTiO3)と下部電極層(SrRuO3)を基にして,混晶のスパッタ薄膜を創製した.XRDによる結晶構造分析およびAFMによる強誘電特性評価を実施し,強誘電体特有のヒステリシス特性の計測に成功した.
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