研究概要 |
研究の2年目にあたる昨年度は解析手法の数学的基盤を確立することに重点を置き,研究実施計画の(4)「内力増分を用いた釣合式の数理的裏付けの獲得」を優先して研究を進めた.その結果,以下の明確な成果を得た. a)速度形仮想仕事式を起点として増分形釣合方程式を導出し,その数理的裏付けを獲得した. b)増分形釣合方程式に基づくメッシュフリー大変形解析の定式化を確立させた. c)増分形釣合方程式を有限要素法に適用し,新しいリゾーニング付き有限要素大変形解析手法を提案した. 当初の計画では上記a)とb)を達成した段階で研究実施計画の(1)~(3)に着手する予定であったが,a)とb)を達成した時点で提案手法がリゾーニング付き有限要素法にも適用可能であることを見出した.有限要素法はメッシュフリー法よりも遥かに実績がある信頼された手法であり,本研究の最終目標である熱ナノインプリント解析においてもリゾーニング付き有限要素法を採用する方のメリットが大きいと判断した.そこで,研究実施計画の(1)~(3)の代わりにc)を実施し,未成熟ながらも基本的なリゾーニング付き有限要素大変形解析が実行可能なプログラムを開発して良好な解析結果を得た.その成果は既存のリゾーニング付き有限要素大変形解析よりも遥かに安定した大変形解析が可能となることを示しており,今後従来法では解析困難な大変形問題に適用可能であると考えられる.大変形問題以外にも亀裂進展問題や切削加工問題等においても安定した解析手法の確立が望まれており,c)の内容はこれらの問題に対するこれまでに無い突破口を示唆するものとなっている.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記したc)の手法を発展させ,増分形釣合方程式に基づくリゾーニング付き大変形有限要素解析手法を確立させることを今後の研究方策とする.昨年度に計画した未達成の内容がさらに先送りされるという問題はあるが,現段階ではc)の手法を確立させることの方がより重量であり,一旦確立されれば昨年度に計画した未達成の内容もよりスマートかつロバストな方法で達成出来るようになると考えられる.
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