本研究では、オンサイト血液診断を目指した血漿分離チップの開発を目的としている。本研究で提案する血漿分離技術は、毛細管力を駆動力としたマイクロ流路によるポンプレス血漿分離という特徴を有している。毛細管力は主に流路の幅と表面濡れ性に支配される。そこで毛細管力を効率的に向上させるため、流路の幅・深さといった構造と流路表面の濡れ性について検討した。チップ材料は、安価で成形が容易なPMMA(ポリメタクリス酸メチル)を材料とし、ホットエンボスにより成形を行った。流路成形のための温度、圧力といった条件の最適化を行った。その結果、アスペクト比5程度の流路成形することができた。また、表面濡れ性の向上させるため、酸素プラズマ処理およびリジンポリマーの表面修飾により行った。表面処理に関しても、プラズマ照射条件、およびポリマー修飾条件の最適化を行った。以上の条件を踏まえ、血漿分離評価を行った結果、流路の幅が2マイクロメートルの流路が最も高効率に分離できることを見出した。その血漿分離能は、1分間に200ナノリットルであった。本研究で提案するチップは、毛細管力を送液駆動力としているため、ポンプ、チューブ、電源といった外部装置が不要である。したがって、オンサイトで様々な状況における血液診断への要素技術になると考えられる。また、血漿分離後の血液成分計測を目指して、新規電気化学センサーの開発も行った。電極表面へ金属触媒を修飾した選択的尿酸センサーを開発した。
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