研究概要 |
申請者の提案するレーザ加工とエッチングを併用した鏡面微細加工法ではガラス表面にマイクロ凹レンズの創成が可能である反面、高価なフェムト秒レーザが必要であったり、平面の段差や流路形状といった鏡面溝の創成が困難であった。そこで汎用のYAGレーザ照射によってガラスにエッチングレートの異なる内部改質層を形成できれば、鏡面溝が安価に創成可能であると考えた。 まず、本鏡面微細加工法の形状制御性を高めるために、新規にレーザ微細加工装置の構築を行った。レーザ発振器には低価格で高安定性が得られるDPSSレーザ(レーザ媒質Nd:YAG、CW時最大出力8W、波長1064nm、発振周波数tkHz-20kHz)を、光学系にはガルバノスキャナとテレセントリックfθレンズを組み合わせた高速走査が可能なレーザ走査方式を選定した。また、スキャナの位置決めとレーザ発振を同期させるための制御プログラムを作成した。本プログラムは1か所あたりの照射時間を設定可能であり、試料にレーザのエネルギを精密に調整可能である点で市販のレーザマーカよりも微細加工に有利であるといえる。次に,作製した装置にてガラスのレーザ加工を試みたところガラス材料はレーザ(1O64nm)に対する透過率が高く内部改質ができないことが分かった。そこで、スパッタ成膜装置などによりガラス基板に各種の吸収物質を成膜し,改質が可能かどうか調査した。その結果、銅薄膜をガラスに成膜することで、ガラスの表面加工が可能になった。エッチングレートの異なる内部改質層の形成や鏡面溝加工には至っていないものの、汎用のYAGレーザを用いてガラスの表面加工の可能性を見出した。また、エポキシ系樹脂をガラス表面に塗布し、部分的にレーザで除去することでマスクパターンが形成でき、エッチング後に幅373μm、深さ31μm、33nmRaの鏡面溝が形成できることを見出した。
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