固体表面に微細なテクスチャを作製することで,表面の摩擦係数が減少することが知られている.この原理を切削工具に適用することで,工具・被削材間の摩擦係数が低下し,切削抵抗や工具摩耗などを改善することが可能であると考える.本研究は,工具表面にマイクロ・ナノメータオーダの微細なテクスチャを作製し,そこで発現する摩擦係数の低下現象を応用することで,優れた加工性を持った切削工具を開発することを目的としている.テクスチャを微細加工用工具へ応用するため,小径エンドミルへの適用について検討した.フェムト秒レーザを利用することで,小径エンドミルへのテクスチャの作製が可能であった.これを用いて,アルミニウム合金のミリング加工実験を行った.その結果,切削液の種類によってテクスチャの効果は異なり,水溶性の切削液を使用した場合,凝着によってテクスチャが埋められてしまい,効果が見られない.油性の切削液を用いてミスト加工することで凝着を抑制でき,テクスチャの効果が現れることがわかった.さらに,テクスチャの形状を変化させた実験を行った結果,レーザの干渉によるテクスチャの場合,明確な効果は得られない.一方,溝状のテクスチャを作製し,レーザによるデブリの少ない条件に設定することで,テクスチャによる効果が得られることがわかった.以上の結果より,本技術を小径工具に適用することが可能であり,これによってこれらの工具の加工性を改善できることがわかった.
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