| 研究概要 |
本研究はトラクションドライブを用いた平行軸間で動力伝達を行うシャフトドライブCVTの動力伝達性能向上に関するものであり,それを通して種々のCVTの高性能化に関する設計方法を確立する.CVTの設計には,機械要素,トライボロジー,設計工学等の高度な融合が必要であり,本研究の推進によりそれらの学術分野の発展への寄与が期待できる.社会的には,環境対策へ貢献するための自動車の燃費向上を目指している.本研究では,表面粗さ突起の干渉及びすべりの分担率を考慮したレオロジー解析手法により、トラクション油膜のせん断力を高精度に算出する手法を開発する.これを適用して,トラクション油膜のせん断力を無駄なく利用できる転動体形状と動力伝達経路の新設計方法を確立する.これにより,設計段階でのCVTの性能予測や最適設計による性能向上が可能になる.上記設計方法をシャフトドライブCVTの設計に適用し,動力伝達性能の向上を図る.
平成22年度は,すべりの低減と油膜せん断慮力の向上を同時実現できるゼロスピンディスクの効果を実証した.油膜せん断力シミュレーションの計算精度を向上させ,これを用いてゼロスピンディスク寸法の許容誤差を求めた.ゼロスピンディスクを製作して誤差を測定したところ,最大で3%程度となり,許容範囲であった.その後,ゼロスピンディスクをCVT試験機に組み込んで実験により性能を評価した.トラクションカーブを測定し,計算結果と比較したところ,概ね一致した.皿バネを用いて動力伝達に必要な推力を与え,効率を測定したところ,最大で95.2%を得た.これは計算結果と概ね一致している.油圧ピストンで大推力を与えたところ,動力伝達効率は低下したが,トルク容量は3.3～5.3倍となり,最大で194.5Nmを得た.これらにより,ゼロスピンディスクが理論通り機能していることが確認できた.
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