研究概要 |
本研究の目的は,すべり転倒を防止するために支持基底面(BOS:base of support)を側方に拡大したフットウェア(BOS拡大フットウェア)を開発し,その有効性を明らかにすることである.平成22年度の研究成果より,側方外側にBOSを7cm広げたフットウェアが,滑りやすい床面における60°の方向転換動作において,通常フットウェアに比べて転倒危険性を大幅に低減できることが判った.本年度は,歩容に影響を与えず,側方へのすべり転倒危険性の低減効果を有する,好適なBOSの拡大幅を実験的に明らかにした.市販のオーバーシューに発泡スチロール製のBOS拡大部を装着することでBOS拡大フットウェアを作製した.BOSの拡大幅は,それぞれ側方内側に10mm,20mm,側方外側に15mm,30mmであった.24名の健常成人被験者には,通常フットウェア,2種類のBOS拡大フットウェアそれぞれについて,閉眼状態での単脚立位姿勢を30秒維持する「単脚立位」,乾燥歩行路の「直線歩行」,「継足歩行」,滑りやすい床面での右側60度の方向への「方向転換」の4種類の動作を行うよう指示した.その結果,BOS拡大フットウェアでは,内側へのBOSの拡大によって,直線歩行における歩隔,継足歩行における左右の足の衝突頻度が増加した.閉眼単脚立位実験では,BOS拡大幅の増加に伴い単脚立位姿勢保持の成功率が増加し,静的バランスが向上することが判った.また,BOS拡大フットウェアは,通常フットウェアに比べ,低摩擦面上での方向転換動作における支持足のすべり距離,すべり速度を低減し,転倒危険性を大幅に低減できることが判った.また,少なくともBOSを内側に10mm,外側に15mm拡大することで,方向転換時の側方へのすべり転倒危険性を50%以上低減できることが判った.
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