前年度までの研究で,熱変形を局所的に補償するような構造物を設計するために,熱変形の最小化を行う場合について目的関数の定式化と応力の評価法についての基礎的な検討を行い,着目する点における変位を抑制するための方法論の枠組みを構築することができた.しかしながら,前年度までの方法は,目的関数の評価と感度解析において,熱変形部分のみを考慮した限定した方法となっていた.そこで,本年度では,熱電素子をも含めた系全体の挙動を考慮した方法とするために,これまでに構築してきた方法論を発展させるための検討を行った.そのために,熱電素子を用いた熱変形機構の解析と評価に用いる電流の保存側,電気と熱のエネルギー保存側,熱弾性体の仮想仕事の原理の式に基づく3つの平衡方程式の関係を見直し,感度解析の方法を修正した.そして,この新しい方法に基づいて数値実装を行い,例題を解くことで,新しい方法の有効性を確認することができた.さらに,熱変形を最小化することが目的である本手法を,逆に熱変形を積極的にアクチュエータとして利用するような構造物の最適設計場合に応用する方法についても再検討を行うこととし,大きな熱変形を得るための方法論の見直しを行った.この熱変形最大化の手法についても同様に数値実装を行い,これまでの局所的な評価法と比較して数倍から数十倍の変形を得られることが確認できた.最後に,熱変形の最小化だけでなく最大化したい場合も含めた総合的な熱変形構造物の最適設計法としてまとめをおこなった.
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