研究概要 |
昨年度製作した実験装置を用いて,加振周波数20kHz程度の超音波場中における振動2気泡の合体・反発運動を高速度撮影および画像処理によって定量的に評価した.実験では,加振周波数20kHzにて共振する半径0.1mm程度の気泡を,代表流路幅0.1mmのT字マイクロチャネルを用いて生成した.本気泡発生装置を使用すると,動粘度50mm2/s程度の高粘度シリコーンオイル中においても,半径0.1mm程度の気泡を再現性良く発生可能である. また,振動気泡の合体・反発モデルとして,表面張力によるラプラス圧によって2気泡間の液膜が排液されるとするモデル(静的力学モデル),対向する気泡表面が変形する際の速度にて液膜が排液されるとするモデル(運動学的モデル),及び気泡の膨張収縮運動に伴う液膜内の圧力変動を考慮に入れたモデル(動的力学モデル)の3種類のモデルの妥当性を,液膜の排液速度に関して実験結果と比較することにより評価した.その結果,以下の結論を得た:(1)静的力学モデルは,排液速度を過大評価し,接触時間を小さく見積もる.(2)運動学的モデルは排液速度を過小評価し,接触時間を大きく見積もる.(3)動的力学モデルによる接触時間は,気泡半径方向運動(体積振動)の振幅に依存する.すなわち当モデルは,気泡振動振幅を初期気泡径で除した無次元振幅が0.1程度の場合は接触後数周期で合体するのに対して,無次元振幅が0.01程度の場合は数10周期を合体までに必要とすることを予測する.このことは,実験観察結果と一致する. このような振動気泡の合体運動に加えて,本研究では超音波場中における2気泡の公転運動を観察した.研究背景にある超音波診断・治療においても,条件が揃えば気泡は公転することが推察される.高速度撮影に基づく解析結果,公転気泡に関する以下の知見を得た:(1)公転運動する2気泡の体積振動の位相差は常に180度である.(2)公転一周期の間に,気泡の平均径が変化する(界面を介した質量輸送が生じる).(3)入力電圧の増加に伴い,公転軌道半径は減少し,公転角速度は増加する.
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