研究概要 |
平成23年度は,保有する高速度カメラを用いたキャビテーション気泡発生の高速度撮影,発生した気泡から放出される圧力波の測定,生態模擬ファントムを用いた加熱増強効果の検証を行った.フレームレート500kfps,露光時間250nsで高速度撮影を行うことにより,最初に発生したキャビテーション気泡からの反射波と集束させた超音波が干渉し,キャビテーション気泡群が超音波伝播方向トランスデューサ側に成長する過程を可視化することができた.この結果から,超音波単独の効果によるキャビテーション気泡の発生過程と,キャビテーション気泡からの反射波が干渉する成長過程それぞれを最適化することで,キャビテーション気泡群の発生と成長を目的に合わせて最適化する超音波照射手法が存在することがわかった.また,発生したキャビテーション気泡から放出される音波を保有する超音波診断装置で測定したところ,非常に大きい高調波成分に着目することでキャビテーション気泡の発生を超音波診断装置で検出できることがわかった.さらに,大口径かつ広帯域のハイドロフォンを用いた測定では,非常に広帯域の放出音圧が観測され,ある帯域の音響エネルギーに着目したキャビテーション気泡の検出手法も有効であることが示唆された.さらに,そのように生じたキャビテーション気泡に超音波を照射することで増強された加熱効果を,熱電対で温度測定することによって検証した.その結果,通常の超音波吸収による温度上昇に加えて,キャビテーション気泡が発生した領域で超音波吸収が顕著に高められていることがわかった.ただし,キャビテーション気泡が非常に多く発生した場合は,温度上昇のピーク位置が焦点とずれるケースもあり,効率を最適化するためには,キャビテーション気泡の放出音圧のエネルギーなどを用いて,キャビテーション気泡の発生領域,発生量などを評価する必要があることが示された.
|