冷媒液体の注入によるキャビテーションの衝撃力抑制法の確立を目指して,冷媒注入効果の有効性を実験的に調べた. まず冷媒注入によるキャビテーションの崩壊衝撃力抑制メカニズムを解明するために,冷媒液滴から発泡する単一気泡の膨張・収縮運動に対して可視化計測,圧力計測を実施した.これまでの研究から冷媒液滴から発泡する気泡は水蒸気からなる気泡に比べ各段に膨張するものの,その崩壊時の衝撃力は水のみを使用した場合に比べ小さくなることがわかっている.この現象の詳細を調べるためには気泡の周囲圧力を精密に減圧,加圧することが必要である.そこで気泡の崩壊を促す圧力回復装置を作成し,単一気泡の膨張・収縮運動の詳細を調べた.気泡の周囲圧力を冷媒の飽和蒸気圧力よりも僅かに下回った状態を保った結果,冷媒液滴から発泡した気泡は初期段階では周囲の圧力低下にともなって膨張したが,後に一定の大きさとなった.これは冷媒の蒸発熱による界面の温度降下によるものである.またこの効果は水のみを用いた場合よりも顕著となる.一方,この壁面温度効果は気泡の収縮時には凝縮の抑制効果となり,衝撃力の低減効果の要因となることがわかった. 上記の実験と並行してキャビテーション流れに対する冷媒注入による崩壊衝撃力の効果について調べた.冷媒注入時と非注入時に対してPVDFフィルムを用いた衝撃力計測と可視化計測の同時計測を行った.取得された画像に対して画像処理プログラムを用いることによりキャビテーションの成長挙動と崩壊挙動を分別して両者の流動の相違点を調べた.冷媒を注入した場合では流路内に発生するキャビテーション量は増加するものの,その崩壊挙動は冷媒を注入しない場合に比べ緩やかとなり衝撃力が小さくなることがわかった.
|