研究概要 |
疎水性表面微細構造と抵抗減少効果の関係を実験的・解析的に明らかにし,それらを基に抵抗減少効果に最適な新しい壁面を創生することを目的として研究を行った.本年度は主にマイクロスケール流れにおける流路壁面の表面性状が気液界面の挙動に与える影響,及びその気液界面が流れに及ぼす影響を数値シミュレーションを用い明らかにした.その結果,壁面接触角θ=108°,130°の疎水性表面微細構造では微細構造内に気泡を保持して気液界面を形成しること,親水性のθ=60°,20°では微細構造内に水が流入することが分かった.また,疎水性微細構造において形成された気液界面は,主流の圧力や壁面接触角の影響を受けてその位置や形状を変化させた.これらの気液界面の挙動は実験結果と定性的に一致した. 一方,流路壁面に固相(すべり無し境界条件)と気相(すべり境界条件)を交互に配置したモデルを用いて解析を行った結果,最大33%の抵抗減少効果が確認でき,その抵抗減少効果は気相の配置や流路高さ,レイノルズ数の影響を受けることがわかった.さらに,微細構造における気液界面の位置の変化を考慮した解析を行った結果,抵抗減少効果は界面の位置にも依存し,本研究で行った流れの条件では界面が3μm以上溝の奥へと下降するとすべりによる抵抗減少効果は得られないことが分かった. これらの結果は本研究によって始めて明らかにされたことであり,疎水性表面微細構造による抵抗減少効果の最適化応用に関する指針を得た.よって,本研究結果は工学的・工業的に非常に意義がある.
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