研究概要 |
本研究課題では,腎疾患あるいは尿管結石などの患者に適用される尿管ステントについて,結石形成および逆流現象を明らかにするため,実験的および数値的に尿管内およびステント内流動特性に関する研究を行うことを目的としている.特に,結石形成部位における流動状況を明らかにし,結石形成メカニズムを流体力学的に明らかにする.また,腎盂から膀胱への小ヘッド差流れにおける流動と排尿時昇圧による急激な逆流現象の有無について調べる.膀胱からの尿の逆流状況を明らかにし,逆流防止策を実験的・数値的に検討する. 平成22年度は単純化したモデルにおける数値シミュレーションそして模擬的な流動実験実施のための実験装置構築を行うことを目的としていた.主な成果は以下のとおりである. 1.実験装置の設計・製作 尿管ステントをモデル化した実験装置の設計製作を行った.人体内(腎盂および膀胱内)の圧力差を模擬するため,2つの容器をアクリル樹脂製のステントモデルで接続し,圧力レギュレータで圧力制御できるようにした.圧力レギュレータには,任意の電圧波形を入力でき,様々な圧力変動条件を模擬できる. 2.単純化したモデルにおける数値シミュレーション 汎用コードであるSCRYU/TETRAを用いて試作した実験装置と同スケールの単純化モデルにおける流動解析を行った.設定した圧力変動条件において流量の変化および管路内の速度分布を明らかにできた.流量は製作した実験装置で行った流量計測実験結果と比較的良い一致を得ることができた.また,管路内には順流・逆流条件の両方においてよどみとなる領域が確認できた,この位置は臨床現場で結石が確認できる領域とほぼ一致していることがわかった. 上記の成果を踏まえ,今後は,実際の尿管ステントを実験装置に設置し,人口尿を作動流体として実験を行ってゆくとともに,数値解析の精度向上を目指し,成果をまとめ,公表してゆきたい.
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