研究概要 |
本研究では,腎疾患あるいは尿管結石などの患者に適用される尿管ステントについて,結石形成および逆流現象を明らかにするため,実験的および数値的に尿管内およびステント内流動特性に関する研究を行う.特に,結石形成部位における流動状況を明らかにし,結石形成メカニズムを流体力学的に明らかにすることを目的としている.また,腎盂から膀胱への小ヘッド差流れにおける流動と排尿時昇圧による急激な逆流現象の有無について調べるとともに膀胱からの尿の逆流状況を明らかにし,逆流防止策を実験的・数値的に検討することを目的としている. 本年度は尿を模擬した灌流液を協力者である医科大の教員から提供を受け,結石の析出・形成過程を明らかにするとともに,可視化用試験流路を用いてPIV計測を行いながら,管路内流れ場を明らかにすることを行った. その結果,ステント留置条件では排尿時に対応する膀胱内の圧力上昇により,膀胱から腎盂方向への流れの存在を明らかにした.流量計測データをもとに行ったCFD結果とPIV計測結果との比較を行い,PIV計測では撮影解像度の都合上,解析窓の大きさが粗い状況であるが,比較的低流速場であることから,ある程度曲がり管部の流れ場を捉えられていると考えられる.CFD結果においてもおおよそ同様の流速分布が得られている.懸濁液を用いた結石形成実験において,結石形成のもととなる結晶付着状況を確認した.本実験の範囲では,曲がり管下流部の領域でより多くの結晶付着が確認できた.また,曲り管の外側に多く付着する傾向を示した. 今後,圧力変動下における流動場を用いた結石形成実験を行い,結石形成を抑制できるステント形状や材料について検討を行う必要がある.
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