研究概要 |
本研究では,可動部がなく,風切音・振動のない電気流体ガスポンプの開発を目指している.3年間の研究期間の2年目である平成23年度は,(a)線電極とGND電極間がポンプ性能に及ぼす影響と,(b)線電極を2本および3本用いた場合の多段式線-平行平板型電気流体ガスポンプのポンプ性能に関する実験的調査を行った.さらに,電気流体ガスポンプの性能向上を目的とした(c)線電極の被覆方法の違いの影響について実験的に検討を行った. 具体的に,(a)について,線電極とGND電極との距離をH=6mm,14mm,22mm,30mmの4段階で設定し,正極および負極の直流高電圧下でそれぞれガスポンプの動作実験を行った.実験結果から基本的にHが小さいほど出口平均流速が増加することが分かった.ただし,Hが小さいほど流路の摩擦圧力損失は増加するため,ポンプ効率は流路幅Bに依存する最適距離H_<opt>が存在することが分かった.次に(b)について,線電極数の増加とともに出口平均流速,流量,ポンプ効率が増加することが分かった.これは,線電極数の増加とともに,線電極同士の干渉により線電極1本当たりの消費電力が減少したためであると考えている.また,1~3本の線電極による実験データを得られたことから,線電極数の定性的・定量的な傾向を得ることが出来た.これらの特性は今後,本方式の電気流体ガスポンプの多段化における設計指針として重要な結果である.(c)について,10μm程度の絶縁塗装を部分的に施した線電極を用いて,ガスポンプの動作実験を行い,基本的には絶縁物で部分的に被覆することで,正味の流速と流量を発生できることを実験的に確認した.しかし,十分な流速を得るまでには至っておらず,今後は絶縁物による被覆精度を高める必要があると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策について,平成24年度が最後の年になるので,これまでに得られた実験データに加え,流速や流量,効率,吐出圧などのポンプ性能に影響を及ぼすパラメータに関する実験を行い,線-平行平板型電気流体ガスポンプの実験データベースを確立する.さらに,高速度カメラとレーザーシートにより流路内部を可視化し,かつPIV解析を行い,内部の流動状態を詳細に調査する.最後に,ガスポンプの実験データベースと可視化およびPIV解析結果を組み合わせ,線-平行平板型電気流体ガスポンプの多段化を含めた最適設計の指針を得る.
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