研究概要 |
本年度は,機能性粒子の構成要素となる,相互侵入網目構造を有する感温性ゲルの合成とその熱特性測定,および機能性粒子の設計試作に取り組んだ. ポリアクリルアミドとポリアクリル酸からなるゲルを水中で自由に膨潤させた場合,その重量は乾燥重量と比して10℃水中で約3倍,50℃水中で約10倍程度に増加した.また,水中で直径7mmの円筒状空間に一定量(20mg)のゲルを充填し,水温と円筒端面間距離をパラメータとして変化させると,温度が高いほどまた円筒端面間が短いほど高い膨潤圧を示し,例えば40℃,0.8mmのとき約90kPaに達した.次に,このゲルを密封空気とともに,通水孔を有するアクリル製容器に封入した機能性粒子(カプセル)を想定しその性能を検討した,実験で得られたゲルの特性と気体の状態方程式を考慮してカプセル内での膨潤挙動の推定したところ,容器の質量調整により低温時浮揚・高温時沈降(本研究では10℃-40℃の水中)するような比重を有する粒子の作成が可能であることが明らかになった.このような機能性粒子を熱流体中に多数分散させれば,通常は安定成層を形成する上部加熱系においても,粒子の運動に伴う流動の発生により熱伝達を促進させることが可能になると期待される. 来年度は,ゲルの特性改善,機能性粒子の製作,温度分布を持つ水槽内での粒子の運動およびそれに伴う周囲流体の流動の観察,水槽内温度分布の測定を行い,機能性粒子による逆自然対流の発現とそれに伴う熱伝達特性の改善の実証に取り掛かる予定である.
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