研究概要 |
本年度は,これまで1点計測にとどまっていた本手法を多次元に拡張し,温度分布情報を得られる手法の確立を目指した.具体的には,赤外線カメラをアレイセンサとして用いることで,ふく射強度の2次元情報を入手し,これまで得られた知見をもとに温度再構成する.この手法を,高エンタルピ超音速流れ場の計測に応用した.超音速流れ場においては,衝撃波による大きな温度分布があり,また接触することで新たな衝撃波が発生することから,熱電対のような接触式の点計測では温度計測が困難とされている.しかしながら,本手法を用いたところ,衝撃波構造による温度分布を明確に捉えることに成功した.また,燃焼の不均一による温度分布情報などが得られ,燃料インジェクターの改良に寄与する知見となった.また,本手法はこれまでセンサの応答速度が十分でないために,エンジンの圧縮過程などを測定することは難しかったが,本年度より本学機器分析センターの導入された高速度赤外線カメラを用いることにより,高時間分解能・高解像度での温度計測が可能である見通しが立った.実際に,急速圧縮機で1%程度のCO2をドーピングして,圧縮比12程度で圧縮試験を行い,シリンダヘッドに取り付けたサファイアガラスを通して観察を行ったところ,圧縮時の渦輪による温度変化(計算上では30K程度と見積もられている)を観察することに成功した.これらの知見をもとに,本年度は急速圧縮機内での温度分布情報の取得を目標とする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では,"その場"計測のための小型計測装置の開発を目標の一つとしていたが,装置の小型化には概ねのめどが1年目にすでに付いた.また,1点計測においては奥行き方向に温度分布がある場合や,測定点がエンジン筒内を代表しないケース等で得られた情報の判断が難しいが,アレイセンサを用いることで,これらの場合にも対応できる手法を確立できた.
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