研究概要 |
液中プラズマは,通常の気体中でのプラズマとは異なる性質を数多く持っており,気泡内や気液界面で何が行われているのか深い関心が寄せられている.これまで,気泡挙動に関する研究とプラズマ診断は別々に行われており,それぞれについて様々な知見が得られつつあるが,両者を統合する手段がなく,液中プラズマの特異な現象を理論的に説明できるまでには至っていない.そこで本研究では,液中プラズマのより詳細な内部熱特性を明らかにすることを目的として,気泡運動と連動した温度と生成種の濃度分布の変化を調査した.具体的には27.12MHz,150Wの高周波水中プラズマの発光挙動をダイクロイックミラーによって波長の異なる2つの像に分割し,それぞれにHαとHβのみを透過するバンドパスフィルターに通過させ,それらを同時に一台の高速度カメラで2000fpsの撮影を行った.撮影された画像からHαとHβの発光強度分布を求め,発光強度比から水素の励起温度分布を見積もることができる.一般的に励起温度は電子温度と深く関わっている.圧力を10~101kPaまで変化させた場合の励起温度分布の違いについて,圧力が低い場合には電極面の広い範囲にわたって不規則に変化しているのに対し,圧力が高くなると,温度変化に周期性がみられ,電極面の一部から細長い温度分布が約16msの周期(101kPa)でパルス状に発生するようになる.高速度カメラで撮影された気泡の挙動と比較すると,パルス状に発生する周期は気泡の成長離脱周期にほぼ等しいことから,次のようなことが推測される.電極面でプラズマの熱によって発生した気泡はプラズマを内包しながら成長するが,やがて浮力によって電極面から上方へと離脱する.離脱する直前の気泡は電極面から細長く伸びた状態となり,このときに細長い温度分布がみられると考えられる.今後,このことについて明らかにする.
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