研究概要 |
液中プラズマは通常の気体中でのプラズマとは異なる性質を多く持っている.例えば,プラズマの熱によって周囲の液体は蒸発しプラズマは気泡内で発生している様子が観察される.そのとき,気泡とプラズマの相互性や気液界面で何が行われているのか深い関心が寄せられている.これまで,気泡挙動に関する研究とプラズマ診断は別々に行われており,それぞれについて様々な知見が得られつつあるが,両者を統合する手段がなく,液中プラズマの特異な現象を理論的に説明できるまでには至っていない.そこで本研究では,液中プラズマのより詳細な内部熱特性を明らかにすることを目的として,気泡運動と連動した温度と生成種の濃度分布の変化について調査した.対象としたのは27.12MHz,150Wの高周波水中プラズマである.前年度は,プラズマ発光の様子をダイクロイックミラーによって波長の異なる2つの像に分割し,それぞれにHαとHβのみを透過するバンドパスフィルターに通過させ,それらを同時に一台の高速度カメラで撮影した.撮影画像からHαとHβの発光強度分布を求め,発光強度比から水素の励起温度分布を見積もることができた.励起温度分布は,圧力が低い場合には電極面の広い範囲にわたって不規則に変化するのに対し,圧力が高くなると周期性がみられ,電極面の一部から細長い高温度分布がパルス状に発生した.今年度は温度分布と気泡挙動との関係を調査した.前年度と同じ装置に外部からHβに近い波長の発光LED照明を気泡に与え,LEDに照らされた気泡とHαの発光強度分布を同時に撮影した.その結果,気泡が浮力によって電極面から離脱する際に気泡と電極面の間で細長い高温度分布は生じ,その後,高温度分布が生じた周囲の液体が蒸発して次の気泡が発生し成長することが明らかとなった.本手法は今後液中プラズマの挙動を診断するときの有用なツールとなり得る.
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